志の輔落語

上穂悠生

2024年04月26日 21:28

ずいぶんと不可解な番組の終了の仕方をしたNHKの「ためしてガッテン」、
落語家の立川志の輔さんがずっと進行役をつとめていた。
番組終了以来、志の輔さんを見る機会がぐっと減ってしまった。
薬のCMくらいか。
私を含めて、寂しい思いをしていた方は大勢いたのではないだろうか。

4月22日に、北野文芸座で志の輔さんの独演会があった。
久しぶりのことであり、とても楽しみにしていた。

語り口は、「ガッテン」を落語調にしてもらったと思えばいいか。
少々ままやく感じも番組と一緒。
でも、名人の芸というものは不思議なものだ。
目の網膜は間違いなく落語家を映している。
でも脳の中には、落語家の語る情景が創造される。
眼球のピントは落語家にピッタリ合っているのに、
脳内に創造された映像によって、微妙にゆらぐ。
それほど名人の語りに引き込まれてしまう。
そこに志の輔さんは、すっとぼけたギャグをいれる。
そのすっとぼけ具合が誠に絶品なのだ。
もう腹を抱えて笑うしかない。

志の輔さんの落語の良さを文章で表現することは、
やはりむずかしい。
落語をきいて大声をだして笑う幸福感は、会場に足を運んで、
落語家と同じ空気を吸って味わうのが一番なのではないだろうか。

当夜は、ほの暖かい春の宵、
満月に近い月が、雲から出たり隠れたり、
心地よく夜道を帰ることができたのであった。