善知鳥(ウトウ)は海鳥だ。その海鳥の名前を冠した峠が長野県塩尻市にある。なんとも不思議なので調べてみた。


 信州の方言辞典によれば、中信から南信にかけて、「空洞」のことを「うどー」と言うことがあるらしい。「うろ」がなまったものかもしれない。「信州百峠」という本や現地の案内文によれば、峠の地形から「うとー峠」と呼ばれたのだろうということだ。ただ、断定はしていないが、「善知鳥」という表記になったのは、ある民話が重なってしまったらしい。


 その民話とは、おおざっぱに次のような内容だ。
 ある猟師の親子がウトウのヒナを捕まえた。珍しいので都で売ろうとするのだが、ウトウの親が追いかけてきた。ある峠にさしかかって吹雪にあい、双方の親はともに子を守って死んだというのだ。
 その峠が「善知鳥峠」であったかどうかはともあれ、この物語、室町時代には広く流布されていたらしく、驚くことに世阿弥がその後日譚を能の一演目として創作してしまった。死んだ猟師の父親が地獄に落ち、鳥の亡者に苦しめられるという内容だ。

 民話の中身、うがった見方をすれば、人間社会に実際に起きた出来事をウトウになぞらえたのではないかと思ってしまう。当時は、人身売買もあったのだろうから。フフッ、現代人の下衆のかんぐりか。親が子を思う情愛の民話とみておくのが無難かもしれない。

< 2021年07>
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